凍りのくじら


凍りのくじら (講談社ノベルス)

凍りのくじら (講談社ノベルス)


今、一番好きな作家は?、と聞かれたら、辻村深月と答えます。


「冷たい校舎の時は止まる」
「子どもたちは夜と遊ぶ」
「凍りのくじら」
すべてに共通するのは、深く深く掘り下げられた人物描写、
少し切なく、少し優しく、少し哀しい世界観、そして一気に流れる叙述トリック
去年のメフィスト賞作家で、80年生まれの女性。


今回の「凍りのくじら」は、今までで一番ミステリーではない作品ですが、
長編病の作者にしては読みやすい1冊構成で、かつ、この作者の世界観は十分に。
一番面白いのは、もう圧倒的に「子どもたちは夜と遊ぶ」だけど、
説教くさくなく描かれる「家族愛」など、この作品も大好きです。



以下、若干の不満を。
ミステリー的に(?)ネタバレチックなので、白黒反転。


ドンキの袋に全くの引っ掛けがない、若尾がストーカーで犯人っていうのが。
まぁ、俺の場合は、まさか若尾だという事はあるまい、と思ったのと、
主人公と同じように、若尾に救いがあると信じてしまったので、
まさか、結局最後(最期?)まで、あのままだとは思わなかった。


プライドの高い男だと自覚してる俺としては(苦笑)、
若尾に救いがなく、投げっぱなしで終わっちゃってることにも、わずかに心残りが。