今度はヒトでprotein-induced iPS cells


1週間ほど前の記事になってしまいますが。


iPS細胞 「がん化防止」ヒトでも 米、遺伝子なし作成


つい最近、遺伝子・ウィルスベクターを使わず、タンパク質でマウスiPS細胞を誘導したのをここで話題にしましたが
今度はヒトiPS細胞をタンパク質で作成するのに成功したというニュース。ちなみに違うグループね、どっちも海外だけど。


例によって、一通り論文に目を通してみたところ、
マウスの時は大腸菌由来のリコンビナントタンパク質と、ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬のバルプロ酸を使ってましたが、
今回のは、HEK293細胞に強制発現させて、その細胞抽出液をそのまま培地に添加した模様。バルプロ酸とかは不要。
タンパク質を細胞膜等価させるためには、どちらも塩基性アミノ酸のアルギニンを使用している。
成功確率は0.001 %で、ウィルスベクターを使った場合の1/10だそうです。


マウスでの成功報告があったので、ヒトで成功するのにも驚くには値しないのですが、
なぜリコンビナントタンパク質ではなく、HEKの細胞抽出液なんでしょうね?
大腸菌ではなくヒト細胞、ってのは翻訳後修飾やタンパク質フォールディングの可能性を考えれば妥当でしょうが、
(もっとも膜タンパク質ではないので糖鎖修飾もないし、だから大腸菌の方がお手軽でしょう)
タンパク質を精製せずに、細胞抽出液を使ったのは、やっぱりクエスチョン。
例の4因子以外に、HEK細胞由来の何らかの因子が寄与している可能性も否定できないじゃないですか。


強制発現させたiPS細胞の誘導因子は、アルギニンの他にmycタグも付加しているそうなので、精製も簡単のハズ。
ぶっちゃけ、私が指摘するまでもなく、とっくの昔にやってることでしょう。
今回、精製過程をスキップしたのは、論文のパブリッシュを急いだだけかもしれません。


しかし、誘導に8週間と、通常の2倍の時間がかかっていると言うこともあり、
これが4因子の濃度、添加量の問題だとすれば、精製後のタンパク質で解決できるかもしれません。
すぐに続報が出る気もするので、「次」を楽しみにしています。