piPSじゃなくてpiSPCsなんだってさ


遺伝子使わずiPS細胞、米チームが成功…安全性に期待


山中先生のコメントに悔しさが滲んでいる気もしますが、まさかこれで成功するとは。
遺伝子導入で強制発現させた場合と比べて、どのくらいの量のタンパク質が細胞内に導入されるのか分かりませんが、
分解されたらこれっきりのタンパク質で可能だったということは、山中因子が必要なのは本当に一過性で、
あとは勝手にiPS細胞を維持するシグナルネットワークが構築されるんですね。


今、その論文読んでるけど、タンパク質の導入法も末端にArg x 11付けただけだし(塩基性アミノ酸によって細胞膜透過)
そのタンパク質を培地に添加するのも、day 1, 3, 5, 7の4回だけ。
あとは一ヶ月ほど待てば、各種stem cellマーカーの発現したiPS細胞の出来上がり。なんてお手軽。


なんかこの論文、ただでダウンロードできたので一応リンク。
http://www.cell.com/cell-stem-cell/fulltext/S1934-5909(09)00159-3
タイトルも"Generation of Induced Pluripotent Stem Cells Using Recombinant Proteins"とシンプルで、
なにやら小憎たらしい気がするのは俺だけか。カッコイイよね、短い論文タイトル。
つか、なんでこの論文がnature, science, CellじゃなくてCell stem cellなんだろう? 通らなかったのかな?



ここ1年ぐらい、c-mycを抜いたり、低分子化合物を使ってみたり、
ゲノムにランダム挿入されるレトロウィルスをアデノウィルスにしたり、プラスミドベクターにしたり、
あの手この手とiPS細胞のより安全な作成方法を世界中で競争してきたわけですが、
やっぱりタンパク質で上手くいくなら、これが一番安全な方法なんだろうと思う。


まぁ作成効率がどの程度かっていう問題があるのと (少なくともfigureにはそういう情報ない)、
どうもヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤としてバルプロ酸使っているみたいなので、
そっちに由来する危険性がないか、っていうところが課題となるんでしょう。



しっかしさー、転写因子とはいえ、たかだか2〜4遺伝子を発現させるだけで細胞がリプログラミングされるとは、
なんとまぁ摩訶不思議な話だよね。これを考えれば細胞が経年劣化でガン化するのも分かる気がするよ。。。