スロウハイツの神様(上)


スロウハイツの神様(上) (講談社ノベルス)

スロウハイツの神様(上) (講談社ノベルス)


俺が一番好きな作家は誰か、と考えたときに、まず名前が挙がるのがこの人。
その中でも、一番好きなのは第2作の「子どもたちは夜と遊ぶ」、このネタバレには衝撃を受けたし、
前作「ぼくのメジャースプーン」は俺らしからぬ優しい気持ちになれる読後感であった。


これは1月の新刊なので、出たのは少々前なのですが、
卒論→国試と忙しく、国試の帰り道に買い、解答速報が出るまでにファーストフード店で上巻一気読み。
なんつーか、幾ばくかあった国試結果への不安も、読んでる内に忘れさせてくれるものでした。
、、、まぁ読み終わって、買える段になって、突然落ち着かなくなったりもしたのですが。



お話しとしては、人気作家に新人脚本家、敏腕編集、それに漫画家の卵、映画監督の卵、画家の卵が集う、
現代版「トキワ荘」における、青春群像劇、といったところか。
登場人物が20代後半の人々なので、青春群像劇というのはいかがなモノかと思いつつも、
22になった自分のメンタリティーがこの程度なんだから、大人ってのも大したことないんじゃないかと思ったり。


基本的に辻村作品に悪人はいないので、心地よく読める、それこそ作者が言ってるようにおとぎ話なのですが、
それにちゃんとスパイスを乗せて、講談社のベルから出すミステリ小説だから面白い。
や、ミステリではないけどね。でも、今までの作品は必ず「トリック」を忍ばせてくれている。
メジャースプーンのオチも、全く油断していたから、ストーンと入ってきた。叙述トリックはあくまで不意打ちされるから気持ちいい。



と、ここまで全くスロウハイツの話をしてませんが、まぁまだ上巻までしか読んでないので。
上巻で好きなのは、チヨダコーキの事件直後のコメント、


あー、軽く説明すると、人気作家チヨダコーキの小説をまねて、「バトルロワイヤル」風集団自殺事件が起きた、
そしてチヨダ宅に押しかけるマスコミたち、何も知らなかった作者本人。
記者たちからマイクを向けられて放ったコメントが、以下。


『僕の書いたものが、そこまでその人に影響を与えたことを、ある意味では光栄に思います。人間の価値観を揺るがせてしまうなんで、小説って、僕が思っている以上にすごい。作者冥利に尽きます』


(中略)


『チヨダさん、責任を感じますか』
意地の悪い、センスのない質問。責任なんて感じる必要は何もないのにもかかわらず、彼の答えは、明瞭だった。
責任を感じるし、僕のせいです、と。

ゲーム脳とかさ、暴力描写の悪影響とか?、あとはフィギュア萌え族にキャラクターに人権をとか、
そういうのを俺はヲタとしての立場上、バカにしているわけだし、事実無根であると思うけど、
そして辻村深月もそういう立場に近いのを読んでて感じ取れるんだけど、
それを踏まえてこのセリフはカッコええ。踏まえてなければイタイだけだけど、これは、かっこいい。


さて、それじゃ下巻を買いに行ってくるか。
後半的に楽しみなのは、嫌われキャラなのかなーという感じがする、ゴスロリ少女加々美莉々亜(25)。
クレバーに自分を演出するこの感じ、ちょっぴり田村ゆかりを連想しました。