神様のパズル


神様のパズル (ハルキ文庫)

神様のパズル (ハルキ文庫)


試験明け、この最後の週末、とりあえずやろうと思ったことが読書でした。
前述の山田悠介「Aコース」、乙一の「暗いところで待ち合わせ」これを試験後に速攻で勝ったのですが、
そのあと書店でこれを発見、ラノベ風の表紙、大森望の解説、小松左京賞、そしてテーマは「宇宙の作り方」。
SFと物理学に憧れと羨望を持つ俺としては、手に取らずにはいられない一冊でした。


で、買って、解説をパラパラと眺めて衝撃の事実。作者が「四十六のおっさん」でした。
、、、ハードSF書くにしたって学園ジュブナイルにする必要はなかったんじゃあ(笑)



感想としては、面白かったが、起承転結の「結」が今ひとつ、かな。
しかし「転」までは絶賛できる。喫茶店で、思わず5時間近くぶっ通しで最後まで読んでしまったほど。
特に穂端がTOEにたどり着き、あそこからラストに入るまでの、風雲急を告げていく課程が良かった。
SF物理論と人間ドラマが、一気に修練してクライマックス!的な。


ただねー、ラストはちょっと陳腐だったか。
キャラ造詣がちょっと(どころじゃなく)浅いんだよね。所詮SF物理論の語り部でしかない、という面があるにせよ。
しかも、物語のクライマックスは主人公の与り知らぬところで進んでしまったから。
主人公以外には感情移入できないし、そもそもそこまでキャラクターが描かれてない。
だから、突然クライマックスの舞台が提示されても、空滑りしてる感は否めない。森矢助教授とかね。


で、結局はキャラクターが浅いことが原因だと思うんだけど、
エピローグ部分はあまりにも美しくない。美しいエンディングが描かれていて、なんか醜悪。
特に穂端の性格変化は、劇的すぎてここまでのキャラクター描写を無価値に貶めるものですよ。
あんなご都合主義にしないで、もっとわずかな変化から魅せる方法もあったろうに。


さらに、エピローグの主人公の達観ぶり、そして「保障論」については、
「四十六のおっさん」だからかなー。少なくとも20そこそこの結論ではないだろうに。
他にも、何となくオヤジくさいところが、節々に存在して。青春小説を書くのには無理があったのではないかと。



何となく、マイナス評価な感想になってしまいましたが、全体を通した結論としては十分に面白かった。
物理学はよく分からなかったけど、まぁ、俺程度の理解で十分楽しめたよ。あとはイメージでカバー。
この作家の第2作が「生命」に関するテーマで、是非とも読んでみたいんですが、

メシアの処方箋

メシアの処方箋

2000円の単行本は、ちと高すぎるよねぇ。どうせ文庫化されるわけだし。